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障害/障がい/障碍/しょうがい 表記方法変遷の歴史まとめ

2019年現在、日本での「障害者」の表記は「障害者」「障がい者」「障碍者」その他が入り混じった状態になっています。

どう表記するのが正しいのかについて、議論もあちこちで続けられています。

今回は、「障害者」表記の最近の歴史についてまとめます。

 「障害」表記の混乱はいつごろから始まった?

内閣府の資料によると、現在の日本で言うところの障害者を指すときに「障害者」と表記するのが一般的になったのはおよそ戦後のことです。

この経緯には身体障害者福祉法の成立も関わっているようです。

「障害者」の呼称が定着する以前には、いわゆる差別的な別の表現が使われることもよくありました。

こちらの記事によると、地方公共団体が「障がい」表記を使うようになったのは2000年からで、東京都多摩市が最初です。

これに追従するようにして、徐々に地方公共団体や企業、メディアでの「障がい」表記が増えてきたわけです。

いっぽう、「障碍者」表記の普及に熱心な障害者団体で代表的なのは「青い芝の会」。彼らの活動は1960年代ごろに始まっています。

彼らはその活動の初期から、いわゆる障害者のことを「障碍者」で統一して表記していたようです。

2010年代に入ると、身体障害者である乙武洋匡氏が2013年に、千葉市長の熊谷氏が2015年にTwitterで「障がい者」表記について問題提起をするといったことが起こりました。

 

 

 

こうした流れをまとめて言えることは、日本での「障害者」の表記で「障害者」「障がい者」「障碍者」の少なくとも3つが入り交じる状態になったのは2000年代に入ってからで、これが一般に問題視されることが増えたのは2010年代に入ってから、ということです。

 内閣府による2010年時点での暫定的見解は「障害」表記

国はこういった状況に対してどんな立ち位置をとっているのでしょうか。

実は、「障害者」の表記については、2010年に内閣府が「『障害者』と表記する」という暫定的な見解を出しています。

「障害」の表記に関する検討結果について  

 

関係各所や一般から意見募集

内閣府はこの見解を発表するにあたり、関係各所や一般から広く意見を募集しました。

関係各所からの意見

「障害」の表記に関する作業チームにおいては、「改定常用漢字表」における「碍」の扱い等について文化審議会国語分科会漢字小委員会の事務局担当 2 者からヒアリングを行うとともに、「障害」の表記については、「障害」のほか、「障碍」、「障がい」、「チャレンジド」等の様々な見解があることを踏まえ、 それぞれの表記を採用している障害者団体、地方公共団体、企業、マスメディア、学識経験者から、その考え方や運用状況等について、計4回にわたり10 名の方々からヒアリングを行った。
 

 

「障害」に関するさまざまな表記をしている関連団体の代表者、また専門家で構成される10人の人から、繰り返し聴き取りを行ったことがわかります。

聴き取った人数は多くありませんが、今のところ他にこういった調査は見つからないので、貴重なデータだと言えます。

資料を詳しく読み込むと、さらに以下のことがわかります。

・障害当事者団体による肯定的意見は「障害」「障碍」「チャレンジド」の表記に対しては存在するが、「障がい」「しょうがい」表記については存在しない

・「障がい」「しょうがい」表記を肯定的に捉えているのは、1地方公共団体、2企業、1専門家だった

ちなみに、「障がい」表記についての当事者団体からの否定的意見は以下のようなものでした。

 (障害者団体:東京青い芝の会)
社会が「カベ」を形成していること、当事者自らの中にも「カベ」に 立ち向かうべき意識改革の課題があるとの観点を踏まえ、「碍」の字を使うよう提唱してきたが、表意文字である漢字を、ひらがなに置き換えて しまうと、「社会がカベを作っている」、「カベに立ち向かう」という意味合いが出ない。

 

(障害者団体:特定非営利活動法人DPI日本会議)
人に対して「害」の字を使用することは不適切であるとして、「障害」の表記を「障がい」に変更する考え方は、障害者の社会参加の制限や制約の原因が、個人の属性としての機能障害にあるとする個人モデル(医学モデル)に基づくものであり、医学モデルから障害を個人の外部に存在する種々の社会的障壁によって構築されたものとしてとらえる社会モ デルへの転換を第一次意見において示した推進会議としては採用すべきではないのではないか。

 

どちらも、「障害者を『障(さわ)り、害している』のは障害者本人ではなく、彼らを囲む社会のほう」というとらえ方をしています。

別の言い方で言えばこれは、「医学モデルではなく社会モデルによって障害者像をとらえるべき」という主張です。

障害者の医学モデルと社会モデルについてはあとで説明します。

一般からの意見 

 平成22年9月10日(金)から30日(木)までの21日間、内閣府、共生社会、障害者施策の各ホームページにおいて、意見募集を実施したところ、637件の意見が寄せられた。

 内閣府は一般にも広く意見募集し、600件超の意見を集めたわけです。

 (一般からの意見の)内訳は、「障害」を支持する意見が約4割、「障碍」を支持する意見が約4割、「障がい」又は「しょうがい」を支持する意見が約1割、その他独自の表記を提案する意見等が約1割であった。

 

こちらも集まった意見の数はそう多くありませんが、「障がい、しょうがい」表記は一般の中でも相対的に支持者が少ないことがわかります。

ここでの「障がい、しょうがい」に対する否定的意見の例は以下のようなものです。

・平仮名の「がい」では実体が見えない。障害の社会性を曖昧にする。

・日本語として不自然

こちらにも、障害は個人的なものでなく社会的なものだととらえる意見がみられます。

 障害者の「医学モデル」と「社会モデル」

「障害者」の呼称・表記の問題でよく出てくるのが、障害者の「医学モデル(医療モデル)」と「社会モデル」の話です。

少し敷居が高いですが、社会での障害者の扱われ方を理解するのにとても重要な理論なので、少し押さえておきましょう。 

医学モデル

「障害」の原因を個人に起するものとして、医療によって介入を行い「治療」しようとする立場の障害者モデル。ごく簡単にいえば、「障害者は自分で自分を障害している」という見方。

たとえば、車椅子の人が階段を上がることができないために2階に上がれなかったとして、車椅子の人の足の機能を回復させることで階段を上がらせ、2階に上がらせようとするのが医学モデル的考え方。

 社会モデル

「障害」の原因を社会に起するものとして、社会変革によって障害を解消しようとする立場の障害者モデル。ごく簡単に言えば、「障害者は社会によって障害を背負わされている」という見方。

たとえば、車椅子の人が階段を上がることができないために2階に上がれなかったとして、その建物に車椅子の人が乗れるエレベーターを設置することでその人を2階に上がらせようとするのが社会モデル的考え方。

 障害者の社会モデルは、2000年前後から本格的に提唱され議論されるようになった理論です。

最新の考え方では、障害者は基本的にはこの社会モデルに沿ってとらえられるのが主流になっています。