初級では、プレーヤーの手だけを見てゲームを進行してきました。少し慣れてくるとディーラーの手も見る余裕が出てくると思います。
中級編では、ディーラーの手、あるいは他のプレーヤの手も加味した遊び方を考えてみましょう。
ヒット-スタンド戦略
ここでは、ディーラーのアップカードも加味したプレーヤーの戦略を考えてみます。数学的な分析はさまざまなされていますが、ここでも収支がもっとも有利になるであろう方法を統計的に求めてみます。
ディーラーの最終手
まず、ディーラーが最終的にどんな手がどれぐらいの確率でできるのかを調べてみます。16でヒット、17でスタンド(S17もスタンド)の条件としました。
A | T | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | |
BJ | 30.77 | 7.69 | ||||||||
21 | 5.39 | 3.45 | 6.08 | 6.94 | 7.41 | 9.72 | 10.82 | 11.12 | 11.44 | 11.74 |
20 | 13.08 | 34.22 | 12.00 | 6.94 | 7.86 | 10.17 | 11.31 | 11.65 | 12.00 | 12.34 |
19 | 13.08 | 11.14 | 35.08 | 12.86 | 7.86 | 10.63 | 11.77 | 12.14 | 12.53 | 12.90 |
18 | 13.08 | 11.14 | 12.00 | 35.93 | 13.78 | 10.63 | 12.23 | 12.59 | 13.02 | 13.43 |
17 | 13.08 | 11.14 | 12.00 | 12.86 | 36.86 | 16.54 | 12.23 | 13.05 | 13.47 | 13.92 |
B | 11.53 | 21.21 | 22.84 | 24.47 | 26.23 | 42.32 | 41.64 | 39.45 | 37.54 | 35.67 |
表を見て分かるのは、アップカードが A~7のときは 10点加わった点数となる確率が最も高く、6~2のときにはバーストする確率が最も高いということです。
したがって、アップカードが A~7のときは、ホールカードは Tであると推定して作戦を立てます。また、アップカードが 6~2のときには、バースト確率が高いということを踏まえた作戦を立てることになります。
プレーヤーの対応
親の最終手に対し、プレーヤーの対応を金額(の期待値)ベースで比較しました。詳細は省略しますが、結果は右の表の通りです。
グレーの領域はヒットした場合とスタンドした場合の期待値の差が小さいので、表の結果とは異なる戦略を採ることもできます。
期待値による結果をごく単純に言えば、アップカードがA~7の場合は、ディーラーと同じように 16以下はヒットを続け、6~2の場合は 12以上は基本的にはヒットせずにディーラーのバーストを待つということになります。
ソフトハンドの場合は、17までが基本的にヒットです。ディーラーが Tか 9のときは、S18でもヒットの方が期待値が大きいようです。
この計算結果は(以下に示すオプションの戦略も含め)、大筋では誰がやっても似ているのですが、細かい点は微妙に違っているようです。計算の前提条件や考え方が人によって、少しずつ違っているためと思われます。(この点に関しては、上級編でもう少し分析してみます)
ただ、計算結果が違っている部分は、いずれにしても僅差ですので、あまり気にする必要はないのかもしれません。
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この表で示したのは、あくまでも無限回数のゲームを繰り返した場合の確率計算の結果を示したものです。通常のゲームの範囲では、まったく異なる結果が(局所的には)発生するのが普通です。
確率に従うか、勘や場の流れを重視するかも、ゲームを楽しむうえでの選択肢といえるでしょう。
オプション戦略
サレンダー
初級編で述べたように、期待勝率が 25%を下回る場合は半額没収のサレンダーを選択した方が有利となります。
下の表では、同一局面が 100回出現した場合の収支の期待値を求めたものです。このあたりではいずれも期待値はマイナスですが、 -50が勝率に換算すると 25%相当になります。
A | T | 9 | 8 | 7 | |
H16 | -51.72 | -53.98 | -50.93 | -45.84 | -41.48 |
H15 | -48.00 | -50.44 | -47.16 | -41.68 | -36.98 |
H14 | -44.00 | -46.63 | -43.09 | -37.19 | -32.13 |
スプリット
スプリットの戦略は、同じ数のカード2枚のままで勝負した場合と、2枚に分けて(結果的に2倍を賭けて)勝負した場合とを比較します。
その結果、アップカードにかかわらず、A+Aと 8+8の場合はおおむねスプリット、T+Tと 5+5はそのままが有利となっています。それ以外は、アップカードにより結果が異なってきます。
計算は、初級編での求め方と同じく、同一局面が 100回出現した場合の収支の期待値で表しています。
T+Tではスプリットするよりもスタンドした方が有利となります。しかし、どうしてもスプリットして勝負に出たい場合は、統計的には、アップカードが 6か 5のときだけにした方がよいということになります。
A | T | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | |
A+A | 9.58 | 17.98 | 13.38 | 10.02 | 8.60 | 23.18 | 24.02 | 22.73 | 21.69 | 20.66 |
T+T | -49.26 | -50.39 | -52.53 | -39.59 | -25.94 | -12.84 | -15.78 | -20.01 | -23.53 | -26.94 |
9+9 | -2.24 | -11.89 | 8.76 | 9.96 | -4.71 | 10.86 | 11.65 | 8.21 | 5.63 | 3.13 |
8+8 | 12.31 | 4.11 | 8.89 | 33.86 | 57.92 | 38.36 | 30.88 | 28.86 | 26.99 | 25.24 |
7+7 | -18.13 | -17.71 | -15.25 | -4.93 | 18.37 | 21.21 | 15.26 | 12.50 | 10.11 | 7.84 |
6+6 | -25.78 | -29.49 | -24.62 | -16.29 | -9.10 | 12.77 | 9.74 | 6.52 | 2.27 | -2.09 |
5+5 | -63.88 | -65.30 | -65.18 | -57.41 | -49.58 | -29.02 | -30.42 | -35.34 | -39.35 | -43.25 |
4+4 | -30.93 | -32.99 | -27.33 | -25.88 | -25.88 | -9.27 | -9.56 | -13.75 | -17.06 | -20.27 |
3+3 | -15.19 | -19.37 | -13.95 | -4.46 | 3.71 | 6.20 | 3.53 | 0.04 | -2.81 | -5.57 |
2+2 | -15.38 | -19.55 | -14.10 | -4.70 | 3.38 | 6.66 | 3.98 | 0.52 | -1.53 | -3.37 |
ダブルダウン
ダブルダウンの戦略は、賭け金を倍にして1ヒットだけした場合と、そのまま普通に勝負した場合との比較になります。
DOAのルールなら下の表のどこででもダブルダウンできます。そうでない場合は、手札の合計値が 9~11の範囲に制限されています(制限のされ方はルールによって異なります)。
下の表は、同一局面が 100回出現したときの期待値を表しています。結果がプラスになる場合がダブルダウンをかけた方が有利になる場面です。グレーの領域は、さほど大きな差がないので、そのまま勝負をしてもダブルダウンをかけても構わないでしょう。
A | T | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | |
11 | -3.39 | 6.02 | 6.95 | 12.07 | 17.07 | 33.37 | 30.73 | 28.30 | 25.94 | 23.62 |
10 | -9.55 | -3.40 | 2.78 | 8.87 | 13.55 | 28.78 | 25.63 | 23.05 | 20.53 | 18.07 |
9 | -37.16 | -31.81 | -25.32 | -12.92 | -7.20 | 12.10 | 8.50 | 5.30 | 2.21 | -0.82 |
S18 | -26.26 | -20.31 | -18.95 | -13.59 | -17.96 | 9.81 | 9.57 | 6.11 | 3.17 | 0.28 |
S17 | -35.71 | -40.87 | -39.96 | -18.22 | -6.76 | 19.83 | 16.46 | 11.89 | 7.80 | 3.79 |
S16 | -45.82 | -30.66 | -30.77 | -24.76 | -17.90 | 22.06 | 19.67 | 13.92 | 8.89 | 3.94 |
S15 | -49.37 | -34.03 | -34.42 | -28.74 | -22.09 | 18.05 | 15.78 | 10.07 | 5.07 | 0.16 |
S14 | -52.98 | -37.46 | -38.12 | -32.77 | -26.34 | 13.99 | 11.84 | 6.16 | 1.21 | -3.66 |
S13 | -56.63 | -40.92 | -41.87 | -36.85 | -30.63 | 9.89 | 7.87 | 2.23 | -2.69 | -7.53 |
S12 | -60.31 | -44.40 | -45.64 | -40.96 | -34.93 | 5.78 | 3.88 | -1.73 | -6.61 | -11.41 |
基本戦略のまとめ
基本戦略表
前項までで検討した結果(基本戦略 Basic Strategy)を1つの表にまとめてみました。
必ずしも、統計的に有利な戦略を採ったからといって毎回のゲームで勝てるというものでもありませんが、長い目で見ればそうした方が相対的に有利になる可能性が高いということです。
凡例
H:ヒット
S:スタンド
R:サレンダー
P:スプリット
D:ダブルダウン
ルール: S17スタンド、LSR、DOA、DAS、スプリットは1回のみ
小さい文字は、オルタナティブを表しています。左ほど確率的に有利な戦略となります。色は、もっとも有利な戦略に応じて色分けしています。
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基本戦略のデータ
基本戦略表を求めるのに用いたデータを表にしてこちらに掲載しておきます。
A | T | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | |
H20 | 65.547 | 55.454 | 75.836 | 79.182 | 77.323 | 70.396 | 67.036 | 66.105 | 65.120 | 64.183 |
H19 | 27.764 | 6.312 | 28.760 | 59.385 | 61.598 | 49.598 | 43.951 | 42.318 | 40.591 | 38.938 |
H18 | -10.020 | -17.830 | -18.316 | 10.595 | 39.955 | 28.344 | 19.956 | 17.585 | 15.046 | 12.605 |
H17 | -47.803 | -41.972 | -42.315 | -38.195 | -10.681 | 1.174 | -4.494 | -8.057 | -11.443 | -14.744 |
H16 | -51.715 | -53.983 | -50.932 | -45.844 | -41.478 | -15.370 | -16.719 | -21.106 | -24.916 | -28.663 |
H15 | -48.001 | -50.443 | -47.158 | -41.678 | -36.976 | -15.370 | -16.719 | -21.106 | -24.916 | -28.663 |
H14 | -44.001 | -46.631 | -43.093 | -37.192 | -32.128 | -15.370 | -16.719 | -21.106 | -24.916 | -28.663 |
H13 | -39.693 | -42.534 | -38.756 | -32.444 | -26.994 | -15.370 | -16.719 | -21.106 | -24.916 | -28.663 |
H12 | -35.054 | -38.104 | -34.001 | -27.157 | -21.285 | -15.370 | -16.719 | -21.106 | -23.214 | -25.031 |
11 | 14.300 | 11.948 | 15.826 | 22.998 | 29.215 | 33.369 | 30.735 | 28.302 | 26.206 | 24.181 |
10 | 8.145 | 2.531 | 11.653 | 19.795 | 25.691 | 28.780 | 25.626 | 23.047 | 20.797 | 18.624 |
9 | -6.130 | -14.858 | -4.780 | 10.275 | 17.624 | 19.602 | 15.803 | 12.898 | 10.340 | 7.869 |
8 | -19.703 | -24.938 | -21.019 | -5.990 | 8.221 | 11.496 | 7.080 | 3.878 | 1.035 | -1.713 |
7 | -31.063 | -32.171 | -29.171 | -21.060 | -6.881 | 2.919 | -0.727 | -4.302 | -7.405 | -10.414 |
6 | -30.419 | -33.795 | -29.313 | -21.724 | -15.193 | -1.301 | -3.492 | -7.292 | -10.471 | -13.562 |
5 | -27.866 | -31.384 | -26.763 | -18.809 | -11.945 | -0.119 | -2.398 | -6.148 | -9.277 | -12.315 |
4 | -25.317 | -28.965 | -24.176 | -15.933 | -8.828 | 1.113 | -1.238 | -4.937 | -8.011 | -10.994 |
3 | -22.804 | -26.584 | -21.629 | -13.094 | -5.744 | 2.447 | 0.017 | -3.626 | -6.642 | -9.564 |
2 | -20.347 | -24.256 | -19.139 | -10.316 | -2.726 | 3.888 | 1.373 | -2.210 | -4.770 | -7.181 |
S20 | 65.547 | 55.454 | 75.836 | 79.182 | 77.323 | 70.396 | 67.036 | 66.105 | 65.120 | 64.183 |
S19 | 27.764 | 6.312 | 28.760 | 59.385 | 61.598 | 49.598 | 43.951 | 42.318 | 40.591 | 38.938 |
S18 | -10.020 | -14.381 | -10.074 | 10.595 | 39.955 | 28.344 | 19.956 | 17.585 | 15.046 | 12.605 |
S17 | -18.013 | -4.964 | -0.135 | -7.292 | 5.382 | 5.779 | 1.778 | -0.025 | -1.804 | -3.527 |
S16 | -16.624 | -20.744 | -14.864 | -6.679 | -0.489 | -4.082 | -7.076 | -8.077 | -9.110 | -10.103 |
S15 | -13.067 | -17.370 | -11.219 | -2.705 | 3.703 | -0.071 | -3.185 | -4.223 | -5.295 | -6.326 |
S14 | -9.457 | -13.947 | -7.516 | 1.328 | 7.951 | 3.989 | 0.754 | -0.321 | -1.431 | -2.498 |
S13 | -5.806 | -10.485 | -3.769 | 5.406 | 12.239 | 8.083 | 4.727 | 3.616 | 2.468 | 1.363 |
S12 | -2.129 | -7.000 | 0.007 | 9.512 | 16.547 | 12.192 | 8.714 | 7.568 | 6.382 | 5.242 |
S11 | 5.453 | 8.984 | 11.389 | 17.535 | 23.144 | 33.369 | 30.735 | 28.302 | 26.075 | 23.901 |
(表の数字は、同一局面が 100回出た場合の収支の期待値を示します。100回とも勝ちであれば +100、負けなら -100になります。)
表から分かるように、配札が H20または H19のときはアップカードにかかわらず常に期待値がプラスとなります。一方、H12~16の弱い手 Stiff Hand のときはアップカードにかかわらずマイナスです。弱い手のときは、我慢の対応を強いられることになります。また、S13~18では、アップカードが 9、T、Aのときはマイナスです。
これらの事実が、基本戦略に反映されることとなります。
カード・カウンティング
ここまでは、毎回のゲームでオープンされたカードを中心に戦略を立ててきました。カード・カウンティング Card Counting は、これに加えて他のプレーヤーのカードも含めて場に出たすべてのカードに着目して戦略を組み立てようというものです。
カードをすばやく数えて計算しなければなりませんし、それまでの計算結果も覚えておかなければならないので、ある程度慣れてこないと大変ですし事前の練習も必要ですが、逆に慣れてきたらチャレンジしてみるのもよいかもしれません。
カード・カウンティングとは
たとえば場に Tカードがまったく出なかった場合、次のゲームでは相対的に Tカードの出る確率が高くなります。逆に、Tカードがたくさん出ていれば、次のゲームではもう Tカードがあまり出ないと考えられます。これによって、さまざまな局面で、判断に影響が出てくると考えられます。
カード・カウンティングは、このような出現確率をより確実に把握しようというものです。
具体的には、たとえば場に Tカードが1枚出るたびに -1、それ以外のカードが出るたびに +1 とし、その合計数に応じて戦略を決めていきます。
単純に加減算をする方法の他、たとえば Aの数を別途数えるサイド・カウント Side Count との組合せなど、複雑な方法までさまざまな方式が開発されています。
カウンティングの用途
カード・カウンティングの最も基本的な使い方は、ベットする金額の増減への応用です。プレーヤーに有利なら増やし、逆なら減らすことになります。
それ以外に、ヒット-スタンド戦略を部分的に修正したり、インシュランスやサレンダーをするかしないかの参考にしたり、といった用途があります。
カウンティングの例
カード・カウンティングには、いくつものやり方があります。方式によって得手不得手がありますし、比較的簡単にできるものから、相当のトレーニングを必要とするものまでさまざまです。
ここでは、始めてカウンティングにチャレンジしてみようという方のために、比較的簡単な方法を紹介しましょう。
まず、カードがシャッフルされた時点をカウント値 -4とします。その後、オープンされたすべてのカードを見て、Tカードなら -2、それ以外なら(Aのときでも) +1とします。
この値が -2以上になった場合は賭け金を大きくし、それ以下なら小さくします。また、カウント値がプラスになった場合はインシュランスをし、マイナスならしません。
資金の準備
基本戦略やカードカウンティング、賭け金マネジメントなどによって、大きく負ける危険性を下げ、勝つ確率を上げることはできます。しかし、いずれにしても、確率の問題ですから、やはりある程度の資金は準備しておく必要があります。
ここでは、どの程度の資金を準備すればよいのかを賭け金マネジメント法毎に考えてみます。
連敗と破産率
まず、ゲーム回数に対して、連敗の発生確率を求めてみました。単純に勝率が5割の勝ちか負けの勝負として計算しました。
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |
10 | 7.57 | 3.09 | 1.17 | 0.39 | 0.10 | – | – |
20 | 21.04 | 10.40 | 4.96 | 2.32 | 1.07 | 0.49 | 0.22 |
30 | 32.54 | 17.16 | 8.61 | 4.21 | 2.03 | 0.97 | 0.46 |
50 | 50.77 | 29.19 | 15.49 | 7.88 | 3.93 | 1.93 | 0.95 |
100 | 77.60 | 52.16 | 30.51 | 16.46 | 8.51 | 4.30 | 2.15 |
横軸が連敗数、縦軸がゲーム数を表します。たとえば、10回のゲームを行ったとき、6連敗が発生する確率は 7.57%です。
100回のゲームを行う場合、10連敗が発生する確率は 8.51%です。あまり起りにくいといえると同時に、起り得ないこともない、といったところでしょう。100回のゲームでは、6連敗・7連敗は半分以上の確率で起るわけですから、それぐらいの連敗をしても当たり前といったところです。
右の表は、連敗したときの累積の損失に、その次のゲームに賭けるだけの資金を加えた額をマネジメント法毎にまとめたものです。
連敗と必要資金
7 | 8 | 10 | 最低 賭け金 |
|
定額法 | 8 | 9 | 11 | 1 |
倍賭け法 | 255 | 511 | 2,047 | 1 |
付加法 | 60 | 72 | 99 | 2 |
加減法 | 36 | 45 | 66 | 1 |
逓減法 | 66 | 82 | 119 | 2, 3 |
比例法 | 57 | 61 | 69 | 5~4 |
加算法 | 16 | 18 | 22 | 1 |
資金の試算
いざ勝負に臨む際にどれぐらいの資金を準備すればよいかについて考えてみます。
前項で求めた連敗したときの損失をもとに、連敗に耐えきれるだけの資金を準備して破産を免れるという考え方を採ります。
100回のゲームを行う場合に約半分の確率で発生する7連敗を耐えきれるだけの資金、約3割発生する8連敗に耐えきれるだけの資金、1割以下の発生確率の10連敗に耐えきれるだけの資金という3種類について、各マネジメント法毎に考えてみます。
小額で楽しむなら定額法
定額法は、勝敗にかかわりなく常に最低額を賭け続けますので、必要資金も最も少なくてすみます。
したがって、手持ち資金が少ないときにブラックジャックを楽しみたいなら、定額法で臨むのが良いでしょう。
準備資金は、最低賭け金の 10~20倍あればよいでしょう。
大きな資金が必要な倍賭け法
倍賭け法は連敗すると破産しやすくなるマネジメント法です。従って、この方法を採用する場合は、最低賭け金に対して十分に大きな資金を持って臨むべきだということになります。
倍賭け法は、連敗がかさむたびに賭け金を倍にするため、何連敗に耐えるようにするかで必要資金が大きく異なってきます。
破産確率が5割程度の7連敗を想定するなら、資金は300単位、破産確率が3割程度の8連敗を想定するなら600単位の資金が必要となります。破産確率1割以下の10連敗を想定すると3,000単位が必要となります。
倍賭け法は、資金の問題だけでなくテーブルの最大賭け金の制限にも注意が必要となります。最小賭け金と最大賭け金の比が 256倍以上なければ、8連敗した場合に対応できないことになってしまいます。10連敗を想定すると、2,048倍以上が必要となります(ラスベガスのカジノでは、そんなに大きな倍率のテーブルは通常はありません)。
賭け金の増大を押さえる付加法
付加法では、7連敗したときの必要準備資金が60単位となりますが、このマネジメント法による最低賭け金は(1単位ではなく)2単位金額ですので、最低賭け金の30倍を準備しておけば7連敗には耐えられるということになります。
同様に、8連敗に耐えるには 40倍の資金を準備すればよいことになります。10連敗を耐えるには 50倍となります。
完全に取り戻す前に負け始めたときの賭け金の増大を緩和する制限付加法を用いた場合は、必要資金も相対的に小さくてすむことになります。詳しくはとことん編で検討することとします。
加減法の必要準備資金
加減法は、7連敗したときの必要準備資金が 36単位ですので、最低賭け金の 40倍を準備すれば耐えられることになります。
同様に、最低賭け金の 50倍を準備すれば、8連敗にも耐えられることになります。10連敗なら 70倍となります。
全体として、付加法よりは若干大きめの資金の準備が必要となります。賭け金の計算が簡便な分、リスクは多少大き目となると考えたほう方がよいでしょう。
逓減法の必要準備資金
逓減法は、7連敗のときの必要準備資金が66単位となりますが、最低賭け金が1単位ではなく2単位となりますので(スタートが 3-2の場合)、最低賭け金の 40倍の資金で7連敗には耐えられることになります。
同様に 50倍の資金で 8連敗に耐えられることになります。10連敗に耐えるには、60倍となります。
逓減法では(3-2でスタートする場合)賭け始めを3単位としていますから、最低賭け金も3単位とすることは可能です(賭け金が2単位以下となったときに最初に戻ることとすればよい)。その場合、必要準備資金は、30-30-40倍となります。
ただし、最低賭け金が$3というテーブルはあまりないので、単純計算は難しいかもしれません。最低賭け金 $5のテーブルで$6を最低賭け金とすれば、$180~$240を準備すればよいということになります。$25のテーブルで $30から賭け始めるとすれば、$900~$1,200を準備することになります。
準備資金が少なくてすむ比例法
比例法は、7連敗したときの必要準備資金が 57、8連敗で 61となりました。10連敗なら 69です。
7連敗~10連敗したときの賭け金が 5~4単位ですから、最低賭け金も一応は5~4単位とすると、最低賭け金の 20倍の資金があれば7連敗~10連敗にも耐えられることになります。
比例法では、手持ち資金が決まらないと賭け金を決められないので、この数字は手持ち資金を 100とした場合のものです。
比例法は、負けが込むと賭け金を小さくするマネジメント法ですから、準備する資金も相対的に小さくても大丈夫です。
加算法の必要準備資金
加算法は、単純に 7連敗したときの損失を求めると 7となります(8連敗なら 8、10連敗なら10)。しかし、このマネジメント法は他の方法と異なり、連敗したときには賭け金を増やしませんので、この値をそのまま受け入れるのは適切ではないでしょう。
加算法の最悪パターンは、1勝1敗を繰り返したときです。
回 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
賭金 | 1 | 3 | 1 | 3 | 1 | 3 | 1 | 3 | 1 | 3 | 1 | 3 | 1 | 3 |
勝敗 | ○ | ● | ○ | ● | ○ | ● | ○ | ● | ○ | ● | ○ | ● | ○ | ● |
差引 | +1 | -2 | -1 | -4 | -3 | -6 | -5 | -8 | -7 | -10 | -9 | -12 | -11 | -14 |
1勝1敗を 7回繰り返したとすると、差引 14の損失となります。必要準備資金で考えるなら 16。(8回繰り返した場合は 18、10回なら 22)。
加算法を採用するときは最低賭け金の20~30倍程度を準備すればよいと考えられます。
賭け金マネジメント法の分析
賭け方をいかに変えたところで、勝率が上がるわけではありません。しかし、適切な賭け方をしなければ、破産する割合を増やしつづけるのがギャンブルです。
ここでは賭け金マネジメント法のパフォーマンスを比較検討してみます。
カード・カウンティングによっても賭け金マネジメントは可能ですが、カードの出方によって結果が変わりますので、単純比較のため除外しました。
ここでは、便宜上勝率5割でそれぞれの賭け金マネジメント方を比較しています。しかし、勝率5割の場合、どのような賭け方をしても、最終的には必ず収支トントンとなります。詳しくはとことんブラックジャックで分析するつもりですが、勝率5割の場合は、毎回いくら賭けようとも常にその収支はゼロになりますから、あるゲームの勝敗がいずれであっても、その次のゲームもやはり収支はゼロとなる計算になります。
勝率が5割をわずかでも上回っていれば、これらの賭け金マネジメント法が効果を表すことになります。ブラックジャックの勝率(収支)についても、とことんブラックジャックで分析するつもりです。
各マネジメント法の特徴
賭け金マネジメントの採否を検討するに当たり、それぞれの方法の特質を分析します。
実際のブラックジャックの収支は、BJやダブルダウンなどもありますので単純な勝敗数以外の要素もありますが、ここではそれらは無視し、単純に賭け金どおりの収支とします。
定額法
毎回同じ額を賭け続ける方法です。単純に勝率5割で元通り、そこから上がるほど収入が増え、下がるほど減ります。
定額法での収支は、単純に勝率どおりになります。勝率が5割なら収支ゼロ、そこから1勝勝ち越すごとに1単位金額プラス、負け越すごとに1単位金額マイナスとなります。
倍賭け法
たとえ何連敗したとしても、1回勝つだけでそれまでの負け分をすべて取り戻します。勝率が低くても勝てる可能性のある方法です。
一方、連敗すると賭け金が幾何級数的に増加するため、残金がなくなってしまいます。倍賭け法を採用したいときには、単位金額に対して相当大きな手持ち資金を準備しておく必要があります。
倍賭け法は、単純に勝数分だけ勝ち越す計算になります。ただし、最終ゲームを勝って終わることが条件となります。
仮に、50勝したとすると 50単位金額の勝ち越しですが、最後に 7連敗すると 63単位金額の負けとなり、通算で 13単位金額の負け越しとなってしまいます。
付加法
最初から1~2回勝てば1ラウンド終了するようにプログラムしてスタートします。
負けた場合には、2回負けた分を1回で取り返す作戦となります。負け回数の半分プラス1~2回で1ラウンド分の勝ちとなります。
倍賭け法のように賭け金が爆発的に増えることは緩和されますが、その分負け分を取り戻すのに何回かかかってしまいますので、取り戻す前に再び負け始めると賭け金が大きくなっていく傾向が出てしまいます。
たとえば、1-2-3で開始したとしましょう。当初の賭け金は4ですが、ここから6連敗し、その後連勝したと仮定します。
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6連敗のあと 5連勝すれば、差し引き 6単位金額のプラスとなります。
5連勝する前に再び負けた場合、賭け金の増え方が大きくなります。たとえば、3連勝後であれば増加分は 4、4連勝後であれば増加分は 5となります。
加減法
勝てば賭け金を減らし、負ければ増やすことで、1勝1敗なら通算で1単位金額のプラスとなります。n連敗と n連勝でも、通算で n単位金額の勝ちとなります。
この方法は勝率5割が前提なので、それよりも低い勝率だと苦しくなります。 勝率が5割を下回った場合、負け越し数に応じて賭け金が高いところで勝負を続けることになります。賭け金が高くても低くても1勝1敗では1単位金額しか勝ち越せないので、リスクがますます大きくなってしまいます。
逓減法
賭け金マネジメントの効果としては、付加法と加減法をミックスしたものと考えることができます。
つまり、負けた場合に負けた回数の半分プラス1回程度で取り返そうとする点は付加法と同じ、勝ったり負けたりを繰り返した場合に少しずつプラスになるようにする点が加減法と同じということになります。
累積金額と回数の2種類の数字を覚えながら計算しなければならないので、使いこなすには少し慣れが必要でしょう。
付加法のときと同じく、最初から6連敗し、その後連勝したと仮定します。
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付加法の場合は、6連敗後の賭け金が(その後勝ち続けたとすると) 10-10-10-10-5 ですが、逓減法では 12-11-10-8 と賭け金が逓減していきます。
比例法
賭け金を常に手持ちの残金の一定比率(たとえば 1/10)で賭ける方法なので、勝てば勝つほど賭け金が増え、負けるほど賭け金を減らしていくことになります。
1勝1敗ペースだと「小さく勝って大きく負ける」パターンとなり、通算で収支がマイナスになってしまいます。その反面、残金が少なくなったときに賭け金を減らしていきますので、破産することは少なくなります。
資金 100で、最初に 10を賭けたと仮定します。
このゲームを負ければ残金 90となり、次のゲームの賭け金は 9となります。これに勝てば +9なので、通算では -1となってしまいます。
最初のゲームを勝った場合、残金が 110となり次のゲームの賭け金は 11となります。これを負ければ -11なので通算ではやはり -1となります。
勝率が5割を大きく超えた場合は、賭け金もそれに連れて大きくなっていきますので、大きく勝ち越せることになります。
加算法
加算法は連勝したときに一気に儲けを増やそうという考え方です。
負けているときには最低単位しか賭けないため、負けが込んだときでも賭け金が大きくなりません。
あまり連勝できずに勝ったり負けたりが続いたときには、差し引きでマイナスとなってしまいます。
加算法で連勝と同数の敗戦の場合、収支は次のようになります。(連勝ごの敗戦以外の負けは常に賭け金が最低単位なので、連敗であろうと通算での負けであろうと同じ結果になります)
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シミュレーション
前項で分析した7つのマネジメント法のパフォーマンスをシミュレーションによって比較してみます。
勝敗の出現比率を考慮して、勝敗モデルを作成してみました。 ここで求めたのは実際のブラックジャックのゲームに従ったものではなく、単純に勝率5割のゲームを繰り返したとしたらどうなるかというものです。
1勝/1敗の出現割合が 1/2、2勝/2敗が 1/4、……6勝/6敗が 1/64、7勝/7敗が 1/128 という比率のまま勝敗モデルを作りました。
ゲーム 回数 |
1勝/ 1敗 |
2勝/ 2敗 |
3勝/ 3敗 |
4勝/ 4敗 |
5勝/ 5敗 |
6勝/ 6敗 |
7勝/ 7敗 |
2 | 1 | – | – | – | – | – | – |
6 | 2 | 1 | – | – | – | – | – |
14 | 4 | 2 | 1 | – | – | – | – |
30 | 8 | 4 | 2 | 1 | – | – | – |
62 | 16 | 8 | 4 | 2 | 1 | – | – |
126 | 32 | 16 | 8 | 4 | 2 | 1 | – |
254 | 64 | 32 | 16 | 8 | 4 | 2 | 1 |
この勝敗表の条件で、それぞれのマネジメント法でゲームをしたものとしました。その結果をまとめたのが下の表です。
収支を最低賭け金に対する倍率で表示してあります。ただし、比例法は最低賭け金は結果的な数字なので、最初の資金(1000単位)からの増減で表しています。
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シミュレーションの結果は、右のようになりました。
このシミュレーションでは、付加法と逓減法が収支のパフォーマンスがもっとも高くなりました。比例法や加算法は、このシミュレーションの結果では収支がマイナスでした。
したがって、パフォーマンスを重視してマネジメント法を選ぶなら、付加法か逓減法ということになります。
マネジメント法の単純さを重視するなら、加減法でしょう。また、準備資金が少ないときは、定額法ということになります。
・勝率5割でシミュレーションしたため、定額法は勝ち負けなし
・倍賭け法は単純に勝ち数分だけがプラス
・加減法も勝敗同数なので、勝ち数分がプラス
・付加法と逓減法はよく似た結果で、収支のパフォーマンスはもっともよかった
・比例法は、勝ち負けを繰り返すシミュレーションでは大幅に負け越し
・加算法は最悪ケースの1勝1敗が5割出現するシミュレーションではややマイナス