正しい雉の撃ち方(アルピニストの排泄方法)

登山用語で排泄することを「雉を撃つ」という。

大小の区別をもって「大雉」(オヤ雉)「小雉」(子雉)と表現し、オナラを「空雉」という。また俗に筒を持つ姿勢から排水を「雉撃ち」とし、脱糞を「お花摘み」と表現したり、男女の区別で「雉撃ち」「お花摘み」と称する向きもある。

筆者としては、お花畑のイメージを損ないたくないので後者の表現は避けて、専ら最初の用法を好んでいるが、特にどれが正しいというものでもないようだ。なお、余談だが「キジめし」といえばいうまでもなくカレーライスをさす。

【正しい雉の撃ち方】

小雉撃ちについては男性諸君は簡単だし、何も問題ない。沢筋や水場から50m以上離れてさえいればどこでもいい。女性の場合、すばやく撃つには慣れが必要かな。

登山道からたまに細い脇道が伸びている。大抵の場合行き止まりで、いわゆる「キジ場」である。風化したトイレットペーパーが完全に分解されずに散乱しているのですぐに解るが、ひどい場合は銀蠅が一斉に飛び立つことも。こういう場所って誰が見ても不愉快だし、キジ場を固定してしまうのは自然にも登山者にとってもよくないことだ。

そこで正しい雉の撃ち方としては、できるだけトイレ設備のないところでは、沢筋を避け、他人と同じ場所で撃たないこと。ルート上では登山者が同じ場所で休憩しやすいのでキジ場も重複しやすいが、他人の踏み跡を避けて人目につかないヤブに分け入ろう。場所としては両手でひっくり返せる石があるようなところが最適。石を持ち上げればちょうど良い窪みができる。用を足したらトイレットペーパーに火をつけ、(山火事に細心の注意をはらい)きれいに燃やす。最後に石を元通りにすることで、跡形もなく済ませることができる。

これは何かと自然の原理に基づいているのです。石の下は小さな昆虫や微生物の住処。微生物にとって、良いものを食べている人間の糞は非常に栄養価が高いのだ。彼等には分解に一役買ってくれるし、知らないで踏み込んだ登山者が落とし物を踏んづける事故も避けられる。ティッシュやちり紙は灰にすることで土に還りやすくなるし、煙りが蠅を寄せつけない。

地表に用を足して紙や草葉をかけただけでは、日陰で湿度の高い樹林帯ではそう簡単に分解せず、保存状態が良すぎるのです。糞付のちり紙が風で飛んでくることもあるし、臭いにつられて蠅があつまり増える一方だ。休憩中に蠅が多いところは付近にゴミかキジ場があるからだ。

そう運良く適当な石があるとは限らない。そんな時はそこらにあるもので腐植土を掘る。ステッキやピッケルを持っているならそれを使う。道具が傷だらけになるのがいやだなんて思っちゃいけない。ピカピカのステッキなんてお登りさん丸だしで、みっともないだけですぞ。

ここでテント用のペグを使うととっても便利。ジュラルミンペグ(2cm幅ぐらいで彎曲した薄いやつ)が軽くて荷物にならないし、先端の形もちょうど小型のスコップのようで掘りやすい。ペグの予備として持参するか、一本\100程でバラ売りされているので、ペグの穴に紐を通してザックの横につけていけばよい。

地面はやはり10cmぐらい掘った方が用を足しやすいし微生物も多い。面倒くさがってはいけません。ネコでさえできることを人間ができないはずがない。きちんと土を戻して早く堆肥になるのを祈りましょう。

岩稜帯の稜線上でしたくなることもある。やはり原則は石の下。下方に小屋がある側や水場になる沢筋がある斜面側は絶対に避けましょう。稜線上は土が少ないので微生物も少なく分解されにくいが、気温差と風雨にまかせることとして、ハイマツ帯にしゃがみ込み、ザレ(ガレ)石をちゃんとかぶせてやる。後はのんびりと小石をケルン状に積んであげよう。青空のもと、遠くの景色を眺めながらの雉撃ちなんて最高の贅沢ですよ。美しく立ち去ることが自然に対する礼儀。ゴミと一緒で、俗世間の痕跡を残さないことが登山者の美学です。

小屋やテントサイトにちゃんとトイレ設備がある場合は、そこで済ますに越したことはない。でも、最近は登山者の増加で屎尿量も半端じゃなくなって問題化してきている。小屋の朝(朝食後)のトイレラッシュはすごいよね。沢山食べ過ぎ、贅沢に出し過ぎじゃなかろうか。余談だが、実際ヒマラヤあたりで日本人の大雉(小屋の裏手にころがっている)を観察してみると、本当に滋養に富んでいるからシェルパのモノとはすぐに区別がつくぐらい。どこまで完全消化できているのかという疑問さえ浮かんでくる。

登山口でトイレ袋が配られたときは、近い将来ゴミと同様に自分のモノを持ち歩かなくてはならなくなるんじゃないかと危惧したものだ。そうなったら今度は糞袋をそこらに捨てていく輩が必ずでる。すると袋入りの化学物質で固まった屎尿は分解されにくい。だから現時点では糞袋携行にもろ手を挙げて賛成できないでいる。

とにかく入山前に便秘や下痢を解消しておくことはいうまでもない。余分な内蔵堆積物は麓で全部出しておいたほうが、体も軽いし足取りも軽くなるというわけ。大腸に蓄積しておいたって体力が蓄積される訳ではないからね。

実を申すと自分の場合、そういう体質なのか、山に入ると2、3日は出さなくても平気。幕営だと食料計画上少食化し、消化の良いものばかりに片寄るせいか、適度な運動量で吸収が良くなるのか、それとも意識的に緊張するためか。。。。。

かといって、便秘というわけでもなく、思いだした様に適度な大雉が撃てるし、下山したとたんスムーズにだせてしまう。もしかすると人間って訓練次第で好きな時に出せるのではなかろうか?それなら少しでも山の屎尿減少化に協力したいものである。