「飲みかけ」と「飲みさし」の違いを解説

「~かけ」というのは、動作がまだ途中であることを表す言葉です。

これに対して「~さし」というのは、動作を終了してしまったことを表す言葉ですね。

ごく最近気づいたのですが、「~さし」という言葉はあまり使われなくなっているようです。

そしてそれと同時に、「~かけ」と同様に、動作の途中の意味で使われる誤用が増えてもいます。

「燃えさしのロウソク」などという言葉を見かけると、反射的に「燃えている途中」という意味だと解釈してまい、本当の意味を確認しようとしないんですね。
このコラムではすっかりお馴染みの、「思い込み」と「確認不足」です。

「~かけ」は漢字にすると「~掛け」でいかにも中途半端にぶら下がっている印象です。

これに対して「~さし」は「~止し」と書くのであって、字から明らかなように動作は終わっています。

居酒屋で、中身が半端に残った酎ハイのグラスを店員が下げようとしていると想像してみてください。

「それは飲みかけだよ。」と言えば店員は「あ、そうですか。」と言ってグラスを戻さなければなりません。

同じ状況でも「それは飲みさしだよ。」と言えば、「あ、そうですか。」と言って下げていいわけです。

「~かけ」の使用頻度に比べて「~さし」が使われなさ過ぎるために、言葉そのものがいつの間にか忘れられつつあるのではないかと思います。
使われない原因の一つとして考えられるのが、発音です。

実際に大きな口を開けて試していただきたいのですが、「かけ」は【KAKE】と発音するわけで案外すんなりと音を作ることができます。

これに対して「さし」は【SASI】で、子音のSが続くために比較的発音しづらい音の構成になっているんですね。
KよりもSの方が発音しにくいんです。

幼児が言葉を覚えるときに、最後まで上手く発音できないのがサ行なんですよね。

ではありますが、「~さし」も何となく風情があって、いい感じの言葉ではないでしょうか。

こういう言葉は、使うのがたとえ自分ひとりになっても、大切にしたいものだと思っています。

もちろん、正しい意味を踏まえた上で、という条件であることは言うを待ちません。

先日、短歌を一首作りました。
その中に「飲みかけのグラス」という言葉を使ったのですが、実はそこを「飲みさしのグラス」にしようかどうかと散々迷った挙句に「飲みかけ」を選択しました。

ここにその歌を披露することはしませんが、「かけ」が「さし」になれば当然のごとく、歌の持つ意味の広がりも変わってきます。
歌によって写し出される情景も変わってきます。

そう考えると、言葉を正確に使い分けることがいかに重要でいかに困難なことかが知れます。