1990年代に小学生の間で大きなブームとなったのが、鉛筆を転がし出た面を使用して戦うゲーム・バトルえんぴつ。通称「バトエン」。
2013年には販売から20周年を記念した復刻版も登場しましたが、ゲーム会社であるスクウェア・エニックスがなぜ鉛筆に着目したのでしょうか。
「バトエン」の歴史について、発売当初から関わって来たという営業担当者に話を聞くことができました。
バトエンのブームは小学校から広がった
── ゲーム会社である御社がどうして「バトエン」を販売することになったのですか?
当時、『ドラゴンクエスト』の下敷きなどの文房具がそこそこ売れていたんです。
そのなかで、1993年にバトル要素を持たせたバトルえんぴつを発売しました。
ただ、最初はそれほど売れていたわけではなかったんですよ。下敷きの方が売れていました。
── それがヒット商品になったのは、なぜだと思われますか?
売れ始めたのは、発売から2、3年経ってからだと記憶しています。
鉛筆の種類が10種類くらいに増えたことで、バトルとしての要素に深みが出てきたタイミングでした。
初めは、どこかの小学校でブームになって、それが派生的に横に広がっていったようです。
売れた理由としては、「学校に持って行けて、休み時間に気軽に遊べる」という要素や、当時の子どもが遊べるホビーグッズが限られていたことなどもあったと思います。
また、当時売れていた商品には、ビーダマン、ミニ四駆、そしてバトエンなどがありましたが、これらは全て『コロコロコミック』で取り上げられていました。
『コロコロコミック』に掲載されたタイミングで一気に売れたという印象が残っています。
最盛期にはバトエンは日本の鉛筆市場の2割を占めていた!?
── 1993年に発売されてから今日まで、何種類くらいのバトエンを作られてきて、どのくらい売れたのでしょうか?
いわゆるドラクエのバトエン以外にも、他社の版権を使ったバトエンなども作っていたので、種類でいえば200くらいですかね。
バトエンを作ってもらっていた製造メーカーさんの話では、最盛期には日本の鉛筆市場の2割くらいをバトエンが占めていたということです。
── バトエン最盛期の頃のエピソードはありますか?
バトエンは、6面体で1面ごとにコマンドが書いてありますから、面とコマンドがちょっとずれただけでも不良品になってしまうんです。
そのため、ふつうの鉛筆の何倍も時間をかけて生産する必要があるんですよ。
おまけに、セットにする4本の柄は全部違うので、印刷ラインも変えなくちゃいけなくて、ブームになったのは嬉しかったのですが、欠品も多く、お客様に納品するまでにすごく時間がかかっていました。
── 途中から、キャップを装備してバトルするようになりましたよね。
キャップが発売されたことも、バトエンが売れたきっかけのひとつかもしれませんね。
主人公キャラクターも武器を装備するというイメージだったので、キャップを装備することによって、よりゲームに近いシーンを再現することができるようになりました。
今でもバトエンは買える?
── バトエンの販売は終了されたのでしょうか?
販売を終了したというわけではありませんが、2006年頃から商品をリピートして生産することはあまりなくなりました。
ここ4年くらい新商品は出ていませんでしたが、20周年のタイミングで復刻版も出ましたし、タイミングが合えば新商品の販売もあるかもしれません。
やす
── 今後、新しいシリーズを発売する予定はありますか?
考えてはいるのですが、少子化で小学生の数も減っていますし、バトエンを禁止する学校が増えたこともあり、これまでどおりというわけにはいかないと思います。
学校で禁止されたことは、売れ行きに大きな影響がありました。休み時間にはバトエンをしてはいけないとか、削ってあれば大丈夫とか、学校によって規則は違いましたが、禁止されたり規則が少し緩んだりの繰り返しもあって、少しずつブームは終息していきましたね。
ブームというものは、一気に来て、一気に終わるというのが一般的ですが、バトエンに関しては、なだらかに落ち着いて行ったという感じです。
実際に、細々とではありますが、まだ市場では動いています。
でも、新商品は発売していないので、終了したと思われても仕方がありませんね。
20周年で復刻版を出したら、子どもの頃にバトエンを使ってくれていた年代の大人が懐かしんで購入してくれましたから、今後もまたそういうことができればと企画を練っているところです。
まとめ
・バトエンが売れるようになったのは、販売から2、3年後、バトルの要素が強まった頃。小学生の間でブームになった。
・小学生向けマンガ雑誌『コロコロコミック』で取り上げられたことで、一気に売れ行きが伸びた。
・20周年を迎えた2013年に復刻版を発売したが、それ以来新商品は出していない。
・バトエンのブームは、学校での規則で禁止されたことをきっかけに少しずつ下火になっていった。しかし、市場はまだ動いている。